日本佛教学会2015年度学術大会(第85回大会)
仏教における実践を問う ―社会的実践の歴史と展望―

日程情報

日時2015年9月8日(火)・9日(水)8:30~
開催校東京大学
会場東京大学 本郷キャンパス(アクセス
[研究発表]1番大教室
[会員控室]2番大教室
研究発表9月8日(火)・9日(水)9:00~
総会9月8日(火)16:20~
記念撮影9月8日(火)総会終了後
懇親会9月8日(火)18:30~
理事会9月8日(火)12:00~13:00
9月9日(水)12:00~13:00

大会趣旨文

本学会は、二年を通した統一テーマを掲げ、そのもとに、年度ごとに異なるサブテーマを設けて学術大会を開催してきた。2014、2015両年度は、「仏教における実践を問う」を統一テーマとし、昨年度の大会では「社会的実践の理念」というサブテーマのもと、仏教が社会にどう関わり、社会にいかなる役割を果たしうるかについて、おもに理念的側面から研究報告がなされた。本年度は、それに対して、仏教が実際にこれまで社会といかに関わってきたかを歴史的におさえ、その意義の考察を通して、仏教と社会の関係について今後の展望を模索しようとする。

仏教は、社会に対して、抑制的と積極的とのあい反する方向性をもって向かいあってきた。第一に、仏教は、社会的なるもの、世間的なるものに、迷妄的なるものを見る。生きる必要に駆られ、さまざまな欲望をほとんど無条件の前提にして構築される社会の根底には、死をさえ隠蔽しようとする根源的無知が横たわっている。あらゆる苦悩の根源となるその迷妄は、出世間の智慧によって照破され、いったん否定し去られなければならない。自然状態の社会活動から離脱する出家という道には、仏教が社会に対して有する、この否定的契機が象徴されている。この要素を認めずして仏教の社会参加を無媒介に称揚するなら、仏教の存在意義は世俗に同化して消失し、その運動は世俗社会運動の一部に回収されてしまいかねない。

その一方で、第二に、仏教は、歴史のなかでじつにさまざまなかたちで社会的実践に関わってきた。それは、仏教者個人や集団、寺院や教団が関与し、貧者の救済、施薬や病気治療、教育や被災地・被災者支援活動などの、広義の慈善事業として現れる場合や、社会の改善や改革を目指す社会運動、ときに政治活動として現れる場合などがある。これに加え、葬送儀礼や回忌法要にとどまらず、宗派を超えて寺院を社会一般の公共的場として開きだそうとするこころみも、あらたな宗教的な意味づけをともなった社会実践である。いずれも社会活動に積極的に関与することが、仏教の理念を実現するうえで不可欠なものであるとの信念に根ざしている。

社会の存在様態に左右されることなく、独立自存の道を個々人の内に開鑿することを尊重する第一の立場と、社会や他者との現実における関わりを優先する第二の立場とは、互いに緊張関係に立ちながら、仏教をときどきの歴史のなかに実現させてきた。仏教をこうした社会的実践の文脈においてとらえなおしてみるなら、そこに現れる個別事象の一つひとつは、仏教の本来のありようをそれぞれの制約のもとにて照らし出したものとなっているだろう。仏教における「社会的実践の歴史と展望」は、仏教の存在意義を知るうえで重要な示唆を生み出す可能性を秘めた課題である。時代の急速な変化のなかにあって、忌憚のないかたちでこの課題を論じ、考察を深めることができるなら、そこから仏教のあらたな未来が開かれてくるにちがいない。

2015年9月8日(火)

発表題目レジュメ発表者コメンテーター司会
9:00 - 9:20真宗大谷派における同朋会運動
〈キーワード〉:「同朋会運動」、「清沢満之」、「親鸞」
[ PDF ] 藤原 正寿
(大谷大学)
佐賀枝 夏文
(大谷大学)
野口 圭也
(大正大学)
9:20 - 9:40矢吹慶輝の社会事業
〈キーワード〉:「社会的仏教」、「科学」、「デュルケム」
[ PDF ] 田山 令史
(佛教大学)
9:40 - 10:10コメント・質疑応答
10:10 - 10:40休憩
10:40 - 11:00道元禅と社会貢献 ―「叢林生活」の歴史と展望―
〈キーワード〉:「道元」、「叢林生活」、「坐禅」、「社会貢献」、「健康」
[ PDF ] 池上 光洋
(駒澤大学)
安藤 嘉則
(駒沢女子大学)
中尾 良信
(花園大学)
11:00 - 11:20宗教教育としての坐禅
〈キーワード〉:「実習教育(体験学)」、「原点回帰」、「自己実現」
[ PDF ] 岡島 秀隆
(愛知学院大学)
11:20 - 11:50コメント・質疑応答
12:00 - 13:00理事会
13:00 - 13:20インド医学書における治病の実践 ―社会的実践の歴史と展望―
〈キーワード〉:「インド医学」、「『スシュルタサンヒター』」、「医学書研究」
[ PDF ] 森口 眞衣
(北海道大学)
榎本 文雄
(大阪大学)
則武 海源
(立正大学)
13:20 - 13:40マインドフルネスの歴史的展開とその射程
〈キーワード〉:「マインドフルネス」、「看取り」、「燃えつき予防」
[ PDF ] 井上 ウィマラ
(高野山大学)
13:40 - 14:10コメント・質疑応答
14:10 - 14:40休憩
14:40 - 15:00臨床宗教師の可能性
〈キーワード〉:「臨床宗教師」、「公共性」、「スピリチュアルケア」
[ PDF ] 谷山 洋三
(東北大学)
木越 康
(大谷大学)
若原 雄昭
(龍谷大学)
15:00 - 15:20ビハーラ活動と臨床宗教師研修の歴史と意義 ―親鸞教学を礎にして― [ PDF ] 鍋島 直樹
(龍谷大学)
15:20 - 15:40臨床仏教者の役割と展開
〈キーワード〉:「臨床」、「超宗派」、「公共的役割」、「もやい直し」
[ PDF ] 西岡 秀爾
(花園大学)
15:40 - 16:20コメント・質疑応答
16:20 - 総会
17:50 - 記念写真撮影・懇親会

2015年9月9日(水)

発表題目レジュメ発表者コメンテーター司会
9:00 - 9:20仏教者による生活困窮者支援 [ PDF ] 吉水 岳彦
(大正大学)
清水 海隆
(立正大学)
神達 知純
(大正大学)
9:20 - 9:40仏教福祉の理念から実践への条件 池上 要靖
(身延山大学)
9:40 - 10:10コメント・質疑応答
10:10 - 10:40休憩
10:40 - 11:00近代日本における仏教主義学校の展開
〈キーワード〉:「近代日本」、「仏教主義学校」、「僧堂教育」
[ PDF ] 皆川 義孝
(駒沢女子大学)
龍溪 章雄
(龍谷大学)
加来 雄之
(大谷大学)
11:00 - 11:20井上円了の社会的実践 ―国民道徳論の構想と実践― [ PDF ] 佐藤 厚
(東洋大学)
11:20 - 11:50コメント・質疑応答
12:00 - 13:00理事会
13:00 - 13:20近代における日蓮教団の子弟教育
〈キーワード〉:「日蓮宗」、「教育制度」、「僧侶資格」
[ PDF ] 安中 尚史
(立正大学)
廣澤 隆之
(大正大学)
原 愼定
(立正大学)
13:20 - 13:40仏教の社会的実践を考えるためのいくつかの課題 [ PDF ] 下田 正弘
(東京大学)
13:40 - 14:10コメント・質疑応答
14:10 - 14:40休憩
14:40 - 15:00智顗と王朝の交接
〈キーワード〉:「智顗」、「陳」、「隋」、「晋王広」
[ PDF ] 坂本 道生
(叡山学院)
淺田 正博
(龍谷大学)
箕浦 暁雄
(大谷大学)
15:00 - 15:20叡尊教団の諸信仰と社会的実践 佐伯 俊源
(種智院大学)
15:20 - 15:40親鸞の浄土三部経千部読誦について ―信心に問われる社会的実践―
〈キーワード〉:「恵信尼消息」、「追善」、「信心による転換」
[ PDF ] 黒田 義道
(京都女子大学)
15:40 - 16:20コメント・質疑応答

交通アクセス

地図

【地下鉄最寄り駅】
本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線) 徒歩10分 東大前駅(地下鉄南北線) 徒歩8分
本郷三丁目駅(地下鉄大江戸線) 徒歩8分 春日駅(地下鉄三田線) 徒歩10分
根津駅(地下鉄千代田線) 徒歩10分

【御茶ノ水駅(JR中央線、総武線)より】
地下鉄利用:丸の内線 (池袋行) ― 本郷三丁目駅下車 徒歩10分
地下鉄利用:千代田線 (取手方面行) ― 根津駅下車 徒歩10分
都バス利用:茶51駒込駅南口又は東43荒川土手操車所前行ー東大正門前下車 徒歩すぐ
学バス利用:学07東大構内行 ― 東大構内バス停下車 徒歩2分

【御徒町駅(JR山手線等)より】
都バス利用:都02大塚駅前又は上69小滝橋車庫前行 ― 本郷三丁目駅下車 徒歩9分

【上野駅(JR山手線等)より】
学バス利用:学01東大構内行 ―東大構内バス停下車

これまでの学術大会

大会開催校
2024年度学術大会 「仏教と病」広島大学
2023年度学術大会 「仏教と病」駒澤大学
2022年度学術大会 「衆生 いのちあるもの」佛教大学
2021年度学術大会 「衆生 いのちあるもの」大正大学
2019年度学術大会 「仏教と日本 ―他文化・他思想との交流―」東洋大学
2018年度学術大会 「佛教と日本 ―「日本」的な仏教の特性―」同朋大学
2017年度学術大会 「人間とは何か ―人間定義の新次元ヘ―」 ―仏教から見る「人間」定義の新次元―東北大学
2016年度学術大会 「人間とは何か ―人間定義の新次元へ―」 ―仏教における「人間」定義の諸相―相愛大学
2015年度学術大会 仏教における実践を問う ―社会的実践の歴史と展望―東京大学
2014年度学術大会 仏教における実践を問う ―社会的実践の理念―種智院大学
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